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【ぼくの個人的な物語】素晴らしき世界に介入する手・蝶。

生き物を飼う。少年少女なら誰でも憧れる行為です。これがぼくは昔からニガテです。苦手というか・・・亡くす悲しみが、怖い。

子供の頃からずうっと避けていたことです。しかし、脱サラ後アーティスト活動開始して数年後、こんなことがありました。ちょっと悲しいお話です。

とある春。行きつけのカフェのマスターから蝶の青虫を3匹もらって帰りました(ちなみに、もう十分おっさんの年齢です笑)。キアゲハの青虫。店の前の植え込みでパセリを育ててらっしゃったんですが、パセリはなにせ彼らの大好物。めっちゃ寄ってきてました。

普通ならここで青虫退治!となるんでしょうが生き物を愛するマスターは、常連客のぼくに餌のパセリもつけて持って帰らせてくれました。ぼくはぼくで

よし、アトリエでキアゲハに返すぞ!!

とめちゃくちゃワクワクしてました(^^♪

カフェ近くの川原での一枚

羽化までそう間もなさそうだったので、虫かごの天井を開けた状態にして見守っていました。むっちゃ食うんですよ連中。確かその後もう一回くらいパセリもらいに行った記憶があります(笑)

そしてある朝、アトリエでいつものように虫かごを覗く。すると・・・

一匹もそこにいない! お!

どうやら虫かごを出てどこかでサナギに変身したようです。ぼくはすぐにアトリエ内を見渡し、彼らの変体した場所を探しました。あるやつは天井、あるやつは壁。・・・でも最後の一匹が見当たらない。

ぼくは驚きましたよ。3匹目のサナギは、アトリエにあった段ボール箱の角に(笑) ゴミ箱代わりに使っていた段ボール箱です。なんでこんなとこやねん。。。

ぼくは絵画教室に来る生徒たちに「この箱にもサナギおるから気を付けてね!!」と注意深く伝えました。が、えてしてこういうこと言うやつが一番危ない。結局、ぼくが絵画教室のときに偉そうなこと言いながら箱のサナギに足をぶつける💦 で、サナギが吹っ飛ぶ!

知人から聞いた応急処置で、ぼくは木工ボンドでサナギを段ボール箱にくっつけました。とにかく羽化するときはサナギの下から出てくるから(これはごっつええ感じのコントでも描かれていますね笑)、とにかく高度を保つ必要がある。

そして迎えた翌朝。

アトリエに入る前に、すりガラスの向こうから何やらうごめく気配がわかりました! 蝶が飛び交っている!! 思わず声を上げながらアトリエの扉を開ける。産声こそあげない彼らですが、そこに元気に飛び交っている蝶、蝶・・・ん?

美しい黄色い羽根をはためかせるキアゲハの姿は二匹。もう一匹の姿が見当たらない。でも段ボール箱に目をやるとちゃんと脱皮した抜け殻はある。視線を上にしている僕の目に映らなかっただけ。ちゃんともう一匹もキアゲハになってこの世界に飛び出していました。

ただし・・・アトリエの床を這うようにして羽根をばたつかせている。あとの二匹のように宙を踊ることはなかったんです。

ぼくは泣きながら(当時十分おっさんです)そのキアゲハのもとへ近寄り手ですくいあげました。よく見ると、羽根の下の方がちぎれている。ぼくは改めて彼の抜け殻をまじまじと見つめました。つまりこういうことです。ぼくが木工ボンドを着けすぎたものだから、うまく殻を破ることができず、無理に抜け出そうとして美しい羽根を殻に引っ掛けた。そのおかげで羽根を傷つけたのです。

神様が作り出した数えきれない蝶たちのフォルムは、この世界にとって常に完璧です。蝶にとって当たり前の人生、飛び、食べ、生きる。ぼくが人工的に良かれと思ってした行為は、それを奪ってしまった。それも生きたままで。飛べない蝶は、そのまま数日後に外で息絶えました。あとの二羽が彼のぶんまで生きていると信じたいです。

カフェのマスターは優しくぼくにこう言いました。

「やつらは幼虫からサナギの段階で鳥に食われることもある。面白半分にどこかのガキに殺されることもある。はっちゃん(ぼくです)のおかげで成虫できた。青空は見れた。草木の匂いも知った。それでいいじゃないの」

ぼくが自身の作品のなかに蝶をよく描くこと、教室の生徒に必要以上に介入しないこと、そういった大切にしている場面でのスタイルはこのあたりからいっそう強まりました。正しいことかどうかは別として、ぼくの信じるものではあります。

そもそも本来持つ美しさに必要なものはもうすでに十分にそろっている。

そういうことです。おれもあなたも。たぶん

自分を許せたり、癒せるようにしてくれたもの。それがぼくにとっては「アート」というものでした。

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