YouTube

お金とアート作品の話。

目次

展覧会で、まず何が目に入りますか。

アートの個展会場ではキャプションとよばれるカードが、絵の横に貼ってあります。
たいていは「作品名」「制昨年」「使用画材」が明記されていて、購入可能な場合は「価格」も書いてます。

皆さんはまず最初にどの項目に目が行きますか?
なんとなく想像ですが「価格」にまず目が行く人が多いのではないでしょうか。

「価格」というよりは「金額」としての数字に。

皆さんが聞きにくいであろう、切り絵アーティストHachiの作品価格について話します。

まず最初にお伝えしておきます。切り絵アーティストHachiの作品の価格は、他の作家さんの切り絵作品より高いです…たぶん。

ぼくは他の切り絵の作家さんやその作品にあまり興味がないので、しっかり相場を確認したわけではありませんが、おそらくHachi作品は群を抜いて高額です。
最高値は990,000円です。
でも作品数も多く、ピンからキリまであるので最も低い値で3,800円です。ふり幅でかいです。

アートの世界における「価値」。

そもそもアート作品の値はどうやって付いてるのか、という話ですが、古来からの仕組みで言うと「号なんぼ」で決まっていくことが多いです。
号っていうのは、絵のキャンバスサイズの単位で10号とか20号とかで大きさを表します。ある作家が1号10,000円で作品を描いているとすると、8号80,000円という単純計算です。(8号は455×380㎜で、A3より一回りくらい大きいサイズ)
一人の作家の作品で言うとシンプルにサイズが大きくなると作品の値段があがる、というもの。これが昔ながらの値のつけ方です。
あとはオークションで高く売れたり、コンクールで入賞したりすると価値があがり、1号当たりの値もあがる。誰が上げるのか、というと所属してるギャラリーの人が。というところまでひっくるめて、今でも存在するいにしえのシステム。

で、ここから話を切り絵アーティストHachiへとクローズアップしていきたいのですがその前に、「切り絵」というものがアート界でどういう位置づけかを簡単に説明します。

アート作品におけるヒエラルキー。

芸術作品にもヒエラルキーというものがあります。しっかりと規定はありませんが、たとえば映画だったら「アクションもの」より「文芸大作」が上、とか音楽だったら「Jポップ」より「クラシック」みたいな、なんとなくの位置づけです。(めっちゃざっくりですいません)
絵画で言いますと油絵という画法がヒエラルキーの一番上にあります。
紙に描いた水彩画より、キャンバスに描かれた油絵のほうが偉い、とされます。それは画材・絵の具の耐久性が理由のひとつであり、一番は最も高い技術を必要とされるのは油絵、という考えにもとづいています。
クレヨンや色鉛筆で紙に描いた絵、よりも油絵。ましてや紙を切り抜いてつくった切り絵なんてのは耐久性も低く、高い色彩表現も要求されない画法ととらえられております。
絵画の値をあげる要素にはこのほかに歴史的価値というものがあります。
100年はもつ、有名な画家による油絵、ゴッホやピカソの絵が、画家が亡くなった後にもオークションで高額で落札されるのは、近代にいたってもきちんと現存できてかつ、歴史的価値も加わり、無双状態になるからです。

はい、そんな切り絵です。

で、ぼくは独自の考えにもとづき「耐久性が高いことになんの意味があるのか」ということをずっと主張し続けるアーティストでして、このことについては別のブログで詳しく書いてますのでぜひご一読ください。

あわせて読みたい
~なぜ切り絵で描くのか~ 先日、路上で切り絵パフォーマンスを行っているとき、ぼくの足元に散らかった、切り抜かれた紙のかけらを見た通りがかりの男性が言いました。 「紙、もったいないなあ」...

Hachi作品、購入された最高額550,000円。

さて、前段で話しがとっちらかってしまいましたが、なんとなくアート界隈における「お金」というもの設定の仕方が見えてきたのではないかと思います。

先に言いました切り絵アーティストHachiの作品価格の続きです。
ぼくは、油絵がどう、とか切り絵がどう、という先輩が設けた価格設定の手がかりを無視して値をつけています。このことについては一番最後にお話ししますので。

Hachi作品について、サイズの観点でお話しますね。

これまでのキャリアで一番高値で購入いただいた作品価格は550,000円。
現在のHachi作品の価格設定でいうと、サイズにして15号(652×530㎜)。
で、最も高額の990,000円のものは2倍くらいの大きさなのかというと・・・実はもっと小さい12号(606×500㎜)なんです。

しかも550,000円の作品のひとつ、「月夜の約束」が制作期間10か月に対して、Hachi最高価格作品990,000円の「三つの月」は制作期間は1週間。
何が違うのか。

その大きな理由を三つ挙げます。

ひとつは「三つの月」は、フランスのお城で展示された作品であるということ。
レオナルド・ダ・ヴィンチが最期に住んでいたクロ・リュセ城という場所で飾られた日本人アーティストによる作品が、この「三つの月」です。先に述べました「コンクール入選なども価値に加わる」という点において見たとき、これ以上ない名誉なことであるので付加価値として無視できない要素です。

ふたつ目は、Hachiにとって簡単に手放してはならない作品だから。
この作品は制作した2017年当初、30万円くらいの値をつけておりました。また、デビュー5年そこそこのHachiの作品全体がもっと安価に設定しておりました。
そんな中、この作品は鑑賞した方々が最も好んでくださる切り絵でした。色鮮やかな作品のほうに人気が集中する中、このモノクロ作品がもっとも愛されていることがわかり、「多くの人々の目の前に展示するべきである」と確信しました。つまり易々と誰かに購入されない価格にするべきであると。


そして最後の理由。
それは、この「三つの月」が、切り絵アーティストHachiの流れを圧倒的なスピードで変えた作品であるという事実からです。
作風、仕事、人生、交友関係、あらゆる方面においてHachiの流れを一変させました。それは先に述べた「人気作である」ということが実証される前に、すでに実感できたことでした。
たった1週間で完成させた「三つの月」は、それまでのHachi自身の不遇な環境に対する劣等感や、認めてもらえない社会への不満、アートへの愛、ゴッホやマティスといった諸先輩方への恋慕、あらゆる想いが純然と昇華できた一枚です(いろいろ追い詰められた時期だったんです)。
あえて白黒に仕上げたのも、色彩豊かな西洋絵画の巨人たち(天国におられますが)に驚いてほしいという、少年のような気持ちのあらわれです。
きわめて個人的な理由のように聞こえるかもしれませんが、アーティストの生きざまが作品に投影されることと同じように、作品のほうがアーティストの人生に影響を与えることもあるのです。

そういう、特別な作品でもあるのです。

あわせて読みたい
フランスのお城で展示された「三つの月」の正体 「三つの月」という作品です。 色彩のある八田作品の中でも、白黒のみで仕上げためずらしい切り絵。作品展でいつも人気の高い作品です。 ぼく自身も思い入れが強く、お...

過去のルールを無視して値をつけている理由。

ぼくは、油絵がどう、とか切り絵がどう、という先輩が設けた価格設定の手がかりを無視して値をつけています。

このことについて最後に話しておきたいと思います。

過去から伝わる仕組み、値のつけ方は国内のギャラリーや世界のオークションといった、偉い人々が作ってくださっています。しかしそれに即したところで、そもそも世間一般の人たちに、その相場や価値感覚が広まっていない。いや、広める努力を怠っている、とぼくは感じています。

そんな過去の先人の設けたルールに従って自分の作品に価格をつけるより、ぼくは未来のために価格をつけたい。未来のアーティストたちのために。

アーティストデビューしたころ、仕事の一つとして似顔絵師としてマルシェやイベントに出店することがよくありました。それまで知らなかった世界で、似顔絵師と呼ばれる人々と出会います。そこで初めて、身近に絵の値段というものを感じたわけですがとにかく驚きました。あまりの安さに。
みんな驚くほど安い値で描いていました。
もちろんイベントにおける相場、その人の画歴、いろいろな理由で値段をつけているとは思います。お客さんにとっても、オーダーしやすい値段に、われわれのほうが合わせるのが良いに決まっています。

しかし・・・
あまりにも目先のお金のことしか考えすぎてないか!?とぼくは心底思いました。

現時点で価格や価値に於いてそんな囲いをしてしまうと、未来などない、そう思いました。
これから絵描きになりたい人たちに、「絵描きは貧乏たれ」「絵は安く買うもの」という未来を見せたくない。
なにも高い値段が良い、というわけではない。価値のあるものには、価値に等しい値段をつけるべきであると思うのです。
ぼくは10数年前に誓ったのです。

アートの未来のために作品の価格をつける、と。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次
閉じる