1800年代後半から1900年代初頭にかけて活躍した西洋絵画の巨匠、ルノワール。
フランス生まれの彼の代表作といえば大多数の人が「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」という絵を挙げると思います。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットというダンスホールに集まる、芸術家や学生たちの楽しげな様子を描いた名画です。
踊り、話し、酒を酌み交わす、動き回る群衆の姿を捉え、また外光の様子までも見事に描いています。そこでの会話や温度が額に収められた絵から、香りごと漂ってくるような絵です。
現代のぼくたちが抱く、ルノワールという画家のイメージと性質のほとんどが練り込まれた一作と言えます。ぼくは個人的にこの絵を観る時、心の底から魂が震えるのを感じます。美しすぎて息をのむ、とは多分こういうことかなと思います。
・・・とはいえ、残念ながら実物はまだお目にかかってはいないのですが。
2013年に兵庫県立美術館でルノワールの作品を20点ほど観たんですが、この絵は展示されていませんでした。
でも!
彼の特徴的な筆さばきといえる「光の描写」と、その光を受ける「柔らかい女性の姿」「子供の姿」、これらは十分に堪能できる展覧会でした。今でも脳裏に焼き付いています、あの会場の空気ごと。
ルノワールの絵は、とにかく観ていて楽しいんです。
まるで、何の不安もない子供時代に両親に連れられてやって来た公園や動物園にいるような、そんな安心感をもらえる。
観ているこちらが微笑みを浮かべてしまうほど、楽しい♪
よく知られる温かいタッチの絵以外にも、古典に影響を受けた、というかオマージュに近い「硬い絵」と呼ばれる時代もありました。それでも一環してルノワールが描くのはやはり「楽しい絵画」。
恋人の肖像画を描いた「夏」、妻の従兄弟と次男を描いた「ガブリエルとジャン」、「踊る裸婦」「ジュリー・マネ」・・・素晴らしい絵がいくつもあり、そのどれもが楽しい絵画。幸福を描いた作品たちです。
ルノワールはこう言いました。
「楽しい絵画を偉大な芸術と認めさせるのは難しい。微笑んでいるより、しかめつらをした芸術のほうがいつの世も注目される」
批評家や世間の人々が、自分の作品を観た時、どう受け止められるか、それは百も承知でルノワールは「楽しい絵画」を描き続けました。
「人生には不快なものがたくさんある。だからこれ以上、不快なものを生む必要などない」
それが彼の強い思いだったようです。朝から晩まで、「楽しい絵画」を描きました。
晩年、自転車事故で右腕が骨折し、リューマチの悪化により筆が支えられぬほど指がゆがんでも、です。
そして、18歳年下の妻に先立たれるという悲劇を体験してもなお、ルノワールは「楽しい絵画」を描き続けたそうです。ほんとうに頭が下がる心意気です。
自分の心の苦労や痛みとは別に、人々の目に映る絵は楽しいもの・和やかなものであるべき、を最後まで貫き通した画家でした。
P.S.
めちゃくちゃ余談ですが昔、ぼくが行ったルノワール展。確か神戸で開催されてたと思います。
この時、一番印象に残ったのはノベルティグッズ。
どなたかからチケットを譲ってもらったと記憶してます。で、それと一緒にグッズも付録でついてたんですが、それが
油とり紙。
この頃、営業マンだったぼくは、お客さんからおきゃくさんへ渡り行くので身だしなみに関する小物はありがたかったのですが・・・
油絵の巨匠のノベルティが油とり紙て・・・
と思わずにいられませんでした💦 ほんとに余談ですいません・・・
自分を許せたり、癒せるようにしてくれたもの。それがぼくにとっては「アート」というものでした。
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