YouTubeでぼくは1年間毎週、西洋画家についてのヒストリー動画を上げ続けました。もうこの世に存在しない、名画を残した偉人たちの生涯を10分程度にまとめて語るだけの動画約50本。これはぼくなりの芸術への敬意を表す意味での試みでした。
現在のわれわれ。プロの画家、漫画家、イラスト好きな学生さん、そしてぼく切り絵アーティストHachi。
みんなひっくるめて、過去の偉人たちなしではどんな創作もできなかっただろうと心から思います。
そんな偉人たちのなかで、ぼくは昔、苦手なというか嫌いな芸術家がいました。それは
レオナルド・ダ・ヴィンチです。
あらゆる分野で才能を発揮した人。軍師でもあり、画家でもあり、設計士でもあり・・・いろんな表現に関わってきた言わずと知れた美術界の巨人。
この人がかつて嫌いだった理由。それはぼく自身がかつてこういう考え方を持っていたからです。
「創作物はエロくなければいけない」
ダ・ヴィンチの絵からは性的な香りが感じられず、それは魅力のない作品のように思っていました。「この人、性欲あるんですか」と。(今思うと、すばらしい大先輩に・・・恥ずかしいかぎりです💦)
ぼくが切り絵で描くモチーフはほとんどが女性です。やはり異性への欲求なくして芸術作品の創造はありえないとかたくなに信じていました。
画家はみんなエロくなくてはいかん!
とまっすぐ信じてました。
…が、現在はちょっとこの考えが変わりました。もちろん興味の対象として、性的な感覚は必要だと思います。異性であれ同性であれです。が、今は思います。エロさって実はいらないし、過去の巨匠たちもそういう思いで絵を描いていなかったんではないかと。
露骨に女性の裸をモチーフにしている絵はたくさんあります。大昔の人たちはそのたび論争をしてきました。
しかし、これまで過去の描き手・創作者は性的な欲望を込めて作ってきた人はひとりもいないはず。見る人が勝手に「うわあ裸!」とか「やらしい!」って思ってるだけなんです。
なぜなら、ぼくもよく女性の裸を絵にしますがその間、興奮なんかこれっぽっちもしてない(笑) 「美しい」という気持ち、その美しさを曲線なり色で表現したい、と思いつつ作ってます。
冷静に考えて、ムラムラしながら作品なんで作れない。すこぶる冷静な頭でイーゼルに向かい、完成までガシガシ向き合う。興奮しながらの制作なんてよほどの天才か変態でないとそんな行為、無理なんです。極論、むちゃくちゃエロい人は絵を描いたり彫刻彫ったりとかそんなことに時間割いたりせず、直接女性を抱く(笑)
たとえば料理人が腹減った状態でよだれ垂らしながら料理は作らない。
本当に優れた芸術家は、自分の欲望におぼれ切っていない感覚の持ち主。あるいは神か悪魔に視点を委ねた人間なのではないでしょうか。今はそう考えています。
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