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俺の中の、赤と青。

茶化してきたつもりはないがずいぶん長い間、冗談半分マジ半分で人様に語ってきた話題がある。
最近、ぼくの絵画教室に入ってきた男の子と出会ったこの機会に真剣に語ってみようと思う。

周囲の目を気にせず、
美しいものを「美しい」と言う、
〇〇らしさというものに縛れない、
とても美意識に優れた彼との出会いのしるしに。

おぎゃあと生まれたその日から今日まで、しっかりと自覚を持って生きてきたわけではない。ただ、後付けとして「あの時おれはこう感じていたんだなあ」と今更ながら思うだけだ。

人は誰しも、いま現在たどっている道が正しいのか、下している判断が間違っていないのか正直分からないものだ。けれど、ずいぶん時間が経ったあとで過去の自分についてならある程度検証できるという側面を持っている。

その理論上に立って言わせてもらうと、小学校へ上がるまでのぼくはやはり女の子だったと思う。

ぼくのWEBサイトのプロフィールで「髪が長くてオンナみたいだといじめられていた」と幼少期を振り返り、当時ロン毛だったジャッキーチェンへ憧れから髪を伸ばしていたことをダシにしてきたが、真相は少し違う。
もちろんジャッキーチェンへの憧れ自体は間違いのない事実だが。

幼稚園児だったころ。気になる女の子がいた。

とても色が白く、使い古された表現ではあるけれどまさに透けるような肌をした女の子だった。

「これが、『好き』、という気持ちなのか・・・」

映画やドラマ、両親の影響もあって大人が観るコンテンツに体を浸してきたぼくは、4~5歳の頃にその女の子を意識することを

「この女性のことが、男として好きである」

という認識をした。

そしてその当時のぼくを、その想いはどういう行動に走らせたか。

ぼくが自分の気持ちに気づいた(または気づいたと思われる自覚にも似た意識に目覚めた)とき、ぼくがしたことはこうだった。

毎晩お風呂で、
めいっぱい石鹸をふくませたスポンジタオルで、
自分の身体をごしごしと肌が擦り切れるほど磨く。

ということだった。

肌がミルクのように、透けるように白い女の子への意識の代償に、ぼくは毎晩その行為を続けた。自分の肌から浅黒い色が取れて、白くなることを心底願った。

ぼくにはそれが「恋の気持ちの示唆する行為」に感じていたのだが、その一方で少し違和感を感じてもいた。

なぜならそれは、その女の子を振り向かせる行動ではなくむしろ、

「その女の子になろうとしている」

行動だからだった。

そう・・・ぼくはその女の子みたいになりたかったのだ。と今は考える。

幼少期より色黒だったぼくは、それがとてもコンプレックスだった。

ぼくは、ぼくの好きな、色の白い美しい女の子に「なりたかった」というのが真相だ。

その後、小学生にあがったぼくは、この時期の、どこに境界線があるのかよくわからない性別の自覚に対して何も考えなくなった。

なぜなら、

結果もっと普通に女の子を好きになれたからで、

それが社会的に見ても一般的に常識の範疇におさまっていることを子供ながらに理解できたからだ。

また、それに加えて

「部落に住む者、住んでない者」

「勉強出来る者、出来ない者」や

「スポーツ出来る者、出来ない者」

などといったヒエラルキーを少しづつ目の当たりにしていき、もはや自分が「女子なのか」「男子なのか」といった個人的なレベルの持つ属性、それどころではなくなったからかもしれない。

しかし、実は今でも本当のところは良く分からないのだ。

おれが私なのか、ぼくなのかアタシなのか、あたいなのか。

ぼくは朝ドラが好きで毎シーズン見ているけれど、
「高杉真宙がいい」とか
「横山裕、いいな」とか
「ぐっさんお好み焼き焼いてるとこかっこいい」とか、
いつも男の役者しか印象が残っていなかったり、

最近では菅田将暉くんの結婚も一瞬、小松菜奈にイラっとしたりする自分に気づく時がある。

この感情が正常か異常なのかはきっと誰にも図ることは出来ないと思うが、そういう大多数の感覚からはずれた者を、自分と同じように慈しむおれでありたいとは思う。

「みんなできるのに」

「みんなそんなこと言わないよ」

「みんなと違うよ」

などという根拠の薄い動機で誰かを枠に納めたくないと思う、ひとりの生き物である。

本当は、大多数のみんなのように生きたいと思う。

それができない故、
作品を作ったり、
絵画教室をやっている。

おそらく1万年後も、少数派の個性は生きにくいのだろう。

しかし、「生きにくい」という環境でのみ、輝くことのできる連中はいつの世にもいるのだろう。

深海魚のように

星屑のひとつのように

歴史に残らない空白のページをいろどるだけだったとしても。

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